海のいまを語り合う“海の森”へご来場いただきありがとうございました!
2022.08.30 UP
「食」と「ものがたり」を通して海を伝えるウェブメディア「海のレシピプロジェクト」を運営する海のレシピプロジェクト実行委員会は、8月3日(水)~12日(金)に表参道スパイラルガーデン(スパイラル1F)にて、『海の森、海のいま展 ー海のレシピプロジェクトと新たな航海のはじまりー』を開催しました。
本イベントでは、ウェブメディア「海のレシピプロジェクト」が見聞きし、記事にしてきた“海のいま”を伝え、様々な切り口から語り合う場をつくり、私たちの命の源である“海の森”にアプローチしました。また今回、1年間の取材から見えてきた海の課題“磯焼け”と“未利用魚”に新たな価値を吹き込むべく「#アイゴプロジェクト」を立ち上げました。
会場でのプロジェクト展示、SoupStock Tokyo監修のアイゴだしのスープセットを期間限定で提供し都会の真ん中に「海とつながる」場所をつくり、「海のいま」を感じていただく場となりました。また本イベントは、次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
「海の森、海のいま展」開催概要
日時:2022年8月3日(水)〜8月12日(金)11時~20時
開催場所:スパイラルガーデン(スパイラル1F) 東京都港区南青山5-6-23
主催:海のレシピプロジェクト実行委員会
共催:日本財団 海と日本プロジェクト
協力:Soup Stock Tokyo、株式会社やまろ渡邉、株式会社天洋丸、タキヤ株式会社、キハラ株式会社、株式会社イノウエインダストリィズ、KOANA株式会社
会場構成:畝森泰行建築設計事務所
デザイン:direction Q
会場協力:株式会社ワコールアートセンター
イベント内容
■展示
序章「海のいまを知る」
ーウェブメディア「海のレシピプロジェクト」活動紹介
第1章「海の森のアイゴのこと」
ー海の森からみえてきたアイゴ(写真、映像含む展示)
ーSoup Stock Tokyo監修アイゴを用いた「海のスープ」
第2章「海に流れる時間を感じて」
ー氷のインスタレーション作品(後藤朋美 )展示
第3章「航海のはじまり」
ー海洋プラスチックを用いた舟のインスタレーション(松澤有子)展示
■ コラボレーション
[スパイラルカフェ]
Soup Stock Tokyo監修(期間限定販売/数量限定)
アイゴと夏野菜のサフランブイヤベースと海藻サラダの「海の森スープセット」
■イベント
[TALK EVENT]
「海の森はごちそう−藻場とアイゴから教わること−」
8月5日(金) 18 :30−20:00
ゲスト:友廣裕一(シーベジタブル共同代表)
長谷川友美(映画監督)
松尾琴美(Soup Stock Tokyo 商品部 バイヤー)
「海の時間と私たちの時間─ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」の旅から─」
8月12日(金) 18 :30−20:00
ゲスト:内野加奈子(ハワイ伝統航海カヌー「ホクレア」クルー)
聞き手:stillwater
[WORKSHOP]
「魚網でつくるちくちくサコッシュ」
8月7日(日)13:30−14:30/15:00−16:00
講師:松澤有子(アーティスト)
「海のプラスチックのお話と海洋プラスチックでぺったんカードづくり(はがき5枚付)」
8月11日(木・祝) 13 :30−14:30
講師:松澤有子(アーティスト)、 クラゲのくらちゃん
[LIVE EVENT]
「音楽家による“海のうた”ミニライブ」
8月11日(木・祝) 17:30−18:30
出演:⻘柳拓次(音楽家)
●「海の森、海のいま展」 都会の真ん中に、「海とつながる」場所をつくりました。
海のレシピプロジェクトは都心に住む私たちが、海のそばで暮らす人びとと同じように、海と接点をもてるのは、人々の衝動に語りかけることができる“食”と“ものがたり(アート)”だと考えました。これらの感性を刺激し持ち合わせる人びとが自由に出入りすることができる、東京・青山の文化複合施設「スパイラルガーデン(スパイラル1F)」を会場とし、都心で海のことを考えたり、語り合う時間をひとりでも多くの人とつくりたいと思い、「海の森、海のいま展―海のレシピプロジェクトと新たな航海のはじまり」を企画開催しました。
本展示は、「序章 海のいまを知る」「第一章 海の森とアイゴについて」「第二章 海に流れる時間を感じて」「第三章 新たな航海のはじまり」「綴りの章 未来に紡がれる海のものがたり」から成る5つの章で、展示全体を“ものがたり”として構成。昨年度、海のレシピプロジェクトとして全国18箇所、計54本の取材を重ねた中で見えてきたキーワード、「磯焼け」「未利用魚」をつなぐ存在の一つとして焦点をあてた「アイゴ」と、「海洋プラスチック」を、“食”と“ものがたり(アート)”の切り口から取り上げ展示し、来場者に“海のいま”を伝える機会をつくりました。
●未利用魚「アイゴ」は高級魚の味?! Soup Stock Tokyo監修によるアイゴのスープがスパイラルカフェに登場。おいしく食べることで海の課題に寄与する「#アイゴプロジェクト」をキックオフ。
「#アイゴプロジェクト」とは、海⽔温の上昇などにより全国的に問題になっている磯焼け。海藻を⾷べる草⾷⿂のアイゴなども、その要因のひとつと⾔われている。市場で値がつかず「未利⽤⿂」に分類されるこのアイゴに新たな価値を吹き込み、おいしく⾷べることで海の森=藻場の未来に関わるきっかけをつくるプロジェクトです。
「海のいま」を感じてもらうための試みとして、プロジェクトの経緯と概要を解説する「パネル展示」と約5分の「ドキュメンタリー映像」を放映したほか、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」監修によるアイゴのブイヨンとソテーを用いた「アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース」と海藻のサラダと合わせた「海の森スープセット」を提供しました。スープセットは連日完売の人気ぶりで、来場者のアイゴに対する関心の高さが伺えます。
展示スペースでは、海藻が著しく減少する「磯焼け」が、現在、全国の藻場で起きていて、その主な原因は海水温の上昇や急激に増えている海藻を食べる魚アイゴも原因の一つと考えられていることなどの「海の現状」を伝えました。
アイゴは背びれと腹びれに毒のある棘があるため、処理に手間がかかることや、独特の臭みがあると言われてきたことから、これまでは網に大量にかかっても、捨てるか魚のえさとして扱われることが多く、本プロジェクト始動時には、漁師さんにアイゴを獲ってほしいとお願いしても「誰も食べないよ」と断られてしまいました。しかし、大分県佐伯市の水産加工会社「やまろ渡邉」の渡邉正太郎会長(昨年度の参考取材記事>>>https://uminorecipe.jp/pickup/843)が市の水産課の方や漁協の漁師さんに掛け合ってくださり、長年の経験から、身がぷりっとした無添加の干物が出来上がりました。そして、「Soup Stock Tokyo」によってアイゴの旨みが最大に引き出された、夏らしいサフランブイヤベースが完成し、スパイラルカフェでご賞味いただけることもご案内し、来場者の方々も「食べられるんですか!」と、関心を寄せてくださいました。
会場で「磯焼け」「未利用魚」という言葉を知っているか投げかけてみましたが、「初めて聞いた」という方がほとんどで、まだまだ一般的には知られていないこともわかりました。
8月5日(金)の夜には、この展示と連動して「海の森はごちそう−藻場とアイゴから教わること−」と題したトークイベントを開催。ゲストには、友廣裕一さん(シーベジタブル共同代表)、長谷川友美さん(映画監督)、松尾琴美さん(Soup Stock Tokyo 商品部 バイヤー)をお招きして、磯焼けの現状を伝えながら、藻場再生の新たな取り組みや、これらの現象を通して都心に住む私たちができることを語り合い、四方を海に囲まれる島国日本の食が海と共に育まれてきたこと、海を守ることは私たちの食文化を守ることにもつながることなど、食べる視点から海を感じる時間となりました。
◉参考記事(ウェブメディア「海のレシピプロジェクト」より)
https://uminorecipe.jp/articles/kyushu/tsukumi-saiki/984
https://uminorecipe.jp/articles/kyushu/tsukumi-saiki/955
写真左:アイゴの展示の様子 写真右:「Soup Stock Tokyo」監修による「海の森スープセット(1,380円・税込)」
写真左:展示会場のなかで開催された8月5日のトークイベントの様子 写真右:トークイベントでは、アイゴの干物からとったブイヨンが参加者に配られた
●海の課題“海洋プラスチック”を用いた、舟のインスターレーション
アーティスト松澤有子さんによるインスタレーション作品では、海岸で拾った海洋プラスチックはお魚に、小学校や地域で集めたペットボトルキャップは糸にして編まれています。会期中の7日と11日には、アーティストの松澤有子さんが講師となり、魚網をつかったサコッシュづくりや、海洋プラスチックをつかったペッタンはがきづくりなど、子どもから大人まで一緒に参加できるワークショップを開催。実際に魚網や海洋プラスチックを手にとり、楽しい、面白いという興味関心を喚起させるクリエイティブなものづくりを通して、ポジティブなエネルギーから海の課題に向き合う機会と海への興味につながる時間を作りました。
写真左:「ぺったんはがきづくり」で海の問題に元気よく答える子どもたち 写真右:はがきづくりに使う、海岸に落ちてい海洋プラスチックを選ぶ
写真左:アーティストで講師の松澤有子さん 写真右:海洋プラスチックをスタンプにしたりはがきに付けたりして、素敵なカードの出来上がり
●海の時間と私たちの時間氷のインスタレーションとトークイベント
アーティストの後藤朋美さんによる、氷を通して映像を壁に投影させる「氷のインスタレーション」。映像から流れる波の音が会場全体に静かに行き渡り、大きな海のリズムを感じさせてくれます。時間を経て溶けていく氷の変化によって、映像も変化して映し出される様子は、「意識や身体の様に変容しながら、形態は変わり続けながら存在そのものは変わらずに在るもの」という後藤さんの言葉のように、変わらずに存在する海に対して、私たち自身がどう変化することができるのかを考える機会になったと同時に日常で海を思う時間に繋げることができました。
最終日12日(金)には、GPSもコンパスも持たずに月や星、太陽で方角を読み、エンジンがないカヌーで波や風だけを動力に、水平線の彼方を目指すハワイの伝統航海カヌー「ホクレア」のクルー、内野加奈子さんをゲストにハワイからお迎えして、内野さんの古くからの友人であるスティルウォーターが対話の相手を務める、トークイベント「海の時間と私たちの時間―ハワイの伝統航海カヌー「ホクレア 」の旅からー」を開催しました。今年の6月にハワイからタヒチへの旅で赤道を越える航海をしてきた内野さんの体験から、海から送られてくるサインは、私たちの日常生活でも受け取り活かすことができることも教えてもらいました。また「私たちが見上げる地上の空は、かつての海で、空は海の一部」という言葉が印象に残るトークイベントで私たちは海と共に暮らしてきて、海は、これからも私たちと地球を繋いでくれる存在であることを知る機会となりました。
写真左:「ホクレア 」のクルー、内野の加奈子さん 写真右:海やホクレア に興味をもった参加者で会場は最後まで盛り上がりました
◉参考記事(ウェブメディア「海のレシピプロジェクト」より)
https://uminorecipe.jp/articles/oversea/hawaii/1006
https://uminorecipe.jp/articles/oversea/hawaii/1016
●未来に紡ぐ海のものがたり” 私たちひとりひとりの中にある、海のものがたりを大きな海につなげていく試み
30周年を迎えたバンド「Little Creatures」のほか、ギターのソロユニットとしても活動する、音楽家の青柳拓次さんをお迎えし、海をテーマにしたミニライヴを開催しました。。今回は、参加者の方々に配布した「あなたの海の思い出を教えてください」という質問が記入されたカードを用いて、今回の展示参加アーティストの松澤有子さん、後藤朋美さん、トークイベントのゲスト内野加奈子さんにも一部参加してもらい、朗読も取り入れながら、音楽と共にわたしたち一人一人の中にある“海のものがたりを”大きな海へとつなげていきました。
◉参考記事(ウェブメディア「海のレシピプロジェクト」より)
https://uminorecipe.jp/articles/kyushu/goto/384
●参加者からの声(終了後アンケートより)
・海は魚の“すみか”ばかりと思っていましたが、地球上に生きている人びとにとって大切な“生命”そのものにつながっていることを改めて思いました。
・「知る」ということが大切だなと本当に思いました。ひとりひとりにできること、考えるきっかけとなる展覧会をありがとうございます!
・海に行きたくなりました。今までとは違った視点で海を感じたり、楽しむことができそうです。海を大切にしていくことは食を大切にしていくことに繋がるんだな、、改めて感じました。
・海はたのしい、美しい場所としか思っていませんでしたが、海の美しさの中にもある問題にも気づかされ、でもやっぱり美しいなと思いました。みんなが少しずつ海の気持ちを考える世の中になってほしいです。
・まさか表参道でこんな素敵な展示をやられているとは、、!!たまたま見つけてすごく感動しました。現状、海での問題点を大都会の感度の高い方々に伝える方法としての創意工夫、本当に勉強になりました!!みんなで海の多様性を守っていきたいですね!
・アイゴが食べたくなりました。展示も見やすくて魚網がこんなに綺麗になるのは驚きでした。来てよかった!
・ひとつのストーリーとなっていて海の一部かもしれないが体感できました。素敵な企画をありがとうございます。
・クイズやワークショップで海を身近に感じることができました。楽しかったです!!
・プラスチックでできた舟がとても綺麗で、ゴミを作品にしたり、椅子などの家具にリメイクしたり、使い道を見つけることが素晴らしいと思いました。一方で友人が「そもそも大規模な作品ができるほどたくさんゴミが捨てられているんだね」と言っていて、根本的な解決ができなければ、環境問題はなくならないのだと改めて気づきました。
・たまたま立ち寄りましたが、ここでこういう展示がされていて嬉しく思いました。5歳の子どもが海の生き物に夢中です。これをキッカケにプラスチック問題を見つめることになる親です。みんなでよりよい海に、感謝を行動に移していきたいですね。