海のレシピ project

魚の魅力を届ける、魚食の伝道師

株式会社やまろ渡邉 渡邉正太郎会長

2022.05.11 UP

大分県の南東部に位置する佐伯(さいき)市米水津(よのうづ)地区は、三方を山に囲まれた佐伯湾の入り江から豊後水道を望む自然豊かな地域。複雑に入り組んだリアス式海岸を利用した養殖業が盛んだ。

やまろ渡邉は、明治41(1908)年に米水津で創業した海産物問屋。近年、「より簡単」に調理ができ、「より安全」で「よりおいしく食べやすい」を3つの柱とした魚の加工食品を全国に届けている。

「(家庭での)魚食離れが進んできたのは何のせいだろうと考えたとき、生魚は調理するときに触ると手に生臭いにおいが残り、生ゴミも出るなどの理由から、扱いに比較的手間がかからない肉料理にするのだろうと。だったら、魚を直接手で触れずに鮮度のいい刺身や切り身を食べる方法を考えればいいと思い、水揚げされたばかりの新鮮な魚をさばいて冷凍し、真空パックすることを始めました。もう10年以上前のことです」

新鮮な魚を加工し、急速に凍結するので鮮度を保ったまま、商品として消費者に届く。たとえば、全国でも有数の水揚げ量を誇る佐伯のブリは、刺身やしゃぶしゃぶで楽しめるスライスのほか、切り身の塩ブリも解凍して焼くだけという手軽さ。
「毎日、昼にはその日の朝に水揚げされたブリの味を確かめます。養殖ブリは品質が保てるし、脂分もコントロールされているので、焼いた後、少し時間がたっても固くなりません。何より、トレーサビリティもしっかりしているので安全です」

アジやカマス、サバなどの干物は、中骨を取り除いている。火の通りが早いのでフライパンでも調理できて、魚焼きグリルを汚さない。フライ用には、さばいた魚から骨を取り除き、衣とパン粉を付けてパッケージに。揚げるという最後のひと手間で、ふわふわのフライが食卓に並ぶ。いずれも渡邉会長が消費者の声を聞き、商品化してきた

渡邉正太郎会長は、長年、学校給食を通じて魚食を普及することにも務め、地元産の魚を使ったメニューを提案し採用されたり、魚の語り部として、子どもたちに魚のおいしさを伝えてきた。

「大分の子どもたちが大分の魚のおいしさを覚えていると、土地を離れても大分の味を思い出すことがあるでしょう。食を通じて愛郷心が濃くなると思うのです。おいしいものを食べていい笑顔をみせてくれたら最高です」

常に消費者に寄り添って商品開発をするという渡邉会長にとって、海は自分の夢を達成させるための場であり、生活の場。いつも海に添い寝し、海がないと始まらないという。
私たち(消費者)が魚や海産物を食べることは、海のことを知り、身近に感じることにつながる。

<インフォメーション>

株式会社 やまろ渡邉

原材料は、国内で厳選した鮮度の高い魚。輸入原料が混在することはない。ものづくりのプロセスを大切にし、質の高い干物、水産加工品を製造、販売。明治41年の創業以来、消費者に寄り添って商品開発を続けている。

大分県佐伯市米水津大字宮野浦726番地
https://yamaro-watanabe.co.jp

鶴見食賓館

やまろ渡邉のオリジナル商品を販売するアンテナショップ。揚げたてのすり身の天ぷらは、予約でほとんど売れてしまうほどの人気。扱っている商品のおいしい食べ方を丁寧に教えてくれるスタッフの対応も温かい。

大分県佐伯市鶴見大字地松浦1059番地の1
営業時間 8:30~16:30
定休日 毎週火曜日 / 年末年始 他

写真:高村瑞穂