海のレシピ project

Tsukumi/Saiki

アイゴの可能性を探す旅

[大分県 津久見市/佐伯市]

2022.08.05 UP

背びれや腹びれに毒の棘を持ち、独特の臭みがあるとして市場で値がつかない「未利用魚」に分類されるアイゴ。海藻を食べる魚であることから、著しく海藻が減少する「磯焼け」(海水温の上昇により拡大)の原因のひとつとも言われている。磯焼けが起これば海藻を採る漁業ができなくなるほか、磯の生物がいなくなり、魚が産卵する場所がなくなり、いままで食べていた魚が食べられなくなってしまう可能性も出てきてしまう。海のレシピプロジェクトはこのアイゴを「食べること」で海の未来に関わるきっかけが作れないかと、2022年8月「#アイゴプロジェクト」を始動した。

レシピ

Soup Stock Tokyo 連携企画「アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース」

[アイゴ]

北海道以外の本州以南に生息するというアイゴは、背びれと腹びれに毒の棘をもつため、調理する際、処理に手間がかかるお魚。市場で価値のつかない未利用魚に分類されている。しかし地域によっては「高級魚のような味」と好んで食べられているところもあるそうだ。

[作り方]

今回作ったのは、アイゴのうまみを凝縮した干物でとる、まろやかでコクがある出汁のスープ。頭も骨も、あますことなく出汁に使った。スープはセロリや陳皮で風味付けし、具材はズッキーニやトマトなどの夏野菜を煮込んでさわやかに仕上げる。
スープに盛り付けられた存在感のあるアイゴのソテーは、皮目を9割、身を1割、中火でじっくり焼くことがポイント。香ばしさが残り、パリッとした触感も楽しめる。トマトやサフラン、パセリの色どりも映えるスープの完成だ。

材料2人分

■アイゴと夏野菜のサフランブイヤベース
にんにくオイル(※1)12g/玉ねぎ 40g/セロリ 16g/ズッキーニ 35g/ミニトマト 60g/サフラン(粉末でも可)約2片/アイゴブイヨン(※2)320g/トマトペースト 2.4g/白いんげん豆水煮(汁を切って使用)24g/塩 2g/ショートパスタ(もち麦、大麦等の雑穀でも可)50g(茹で後約100g)/アイゴのソテー用干物 1枚

(※1)にんにくオイル
にんにく(皮つき可)6g/オリーブオイル 50g

(※2)アイゴブイヨン
アイゴ頭 30g/アイゴ中骨 15g/切り身処理後の血合い部分等 4g/水 400g/セロリ 5g/白ワイン 5g/陳皮 0.25g

■トッピング
ブラックオリーブ 2~3粒/ブラックペッパー 1回し/レモン輪切り 1枚/パセリみじん切り 適量/すじ青のりバゲット 1~2枚

■すじ青のりバター
バター 50g/すじ青のり 0.2g

手順
1)ソテーで使う干物を縦半分に切り、さらに3分割に切っておく。

2)出汁をとる。水にアイゴとセロリ、白ワインと陳皮(みかんの皮を乾燥させたもの)を入れ、沸騰させる。灰汁が出たら取り、ボコボコ対流するくらいの火加減に落とす。30分煮だし、細かい目のシノワ等で濾す。

3)スープの具を用意。夏野菜を中心に、玉ねぎをダイス状に1㎝でカット、ズッキーニを5㎜のイチョウ切り、セロリは5㎜の輪切り、ミニトマトは半分にカット、レモンを輪切りにする。

4)お湯に塩を入れてショートパスタのニョケッティを時間通りにゆで、茹であがったらざるにあげて水で冷ます。

5)半分にカットしたにんにくをオリーブオイルが入った鍋80℃で20分程加熱し、にんにくの香りづけしたオリーブオイルをつくる。

6)5)に玉ねぎを入れて中火寄りの弱火で炒める。透き通ってきたら、セロリ、ズッキーニ、塩をひとつまみ、脂が回ってきたらサフランを入れる。サフランに熱が入ったら、2)のアイゴの出汁を入れ、沸いてきたら、5分くらい煮る。トマト、トマトペースト、白いんげん豆を入れ、2~3分したらスープの火を止めて塩を入れる。

7)スープに入れるアイゴをソテーする。オリーブオイルをひき、皮を下にして、皮を9割、身を1割、中火でじっくり焼く。

8)バターを常温に戻して柔らかくする。すじ青のりをほぐしたものを合わせる。バケットに塗り、170℃で7~9分焼く。

9)スープとソテーしたアイゴを合わせて、レモンとパセリ、黒オリーブ、バケットを盛りつけて完成。

「アイゴらしさを届けたい」うまみが凝縮した出汁のスープを考案

Soup Stock Tokyo のシェフ・須山裕之さん

見た目も華やかで夏らしいレシピに仕上がったアイゴのスープ。須山シェフも初めて扱ったというアイゴのレシピをどのように作ったのか、お話を伺った。


「アイゴを食べたことのない人がほとんどだと思うので、シンプルに特徴が伝わるスープにしようと、出汁をベースにしたスープを作ることに決めました。干物で出汁を取ったため、うまみが凝縮した出汁がとれたと思います。うまみは、白身魚の中ではかなり強い方かもしれません。

アイゴは海藻を食べるため、少し磯臭さがあると事前に聞いていましたし、実際に調理してみても感じました。その部分をどうするか悩みましたが、よく考えてみたら、牛もグラス(草)やグレイン(穀物)を食べていますよね。そんな共通点を見つけたら、アイゴも同じようにレシピを考えられるようになりました。

食べやすいスープにしたいという目的もありましたが、磯の香りを完全に消してしまってもアイゴらしさがなくなってしまうため、セロリや陳皮などで緩和しつつ、『アイゴはこんなお魚だよ』、と知ってもらえるようなバランスを考えました。レシピを考えながら、いろんな可能性のある魚だということが分かりましたね。

ぜひスープを食べながら、『タラの味に似ているね』、『サワラの味に似ているね』、などという会話も楽しんでもらいつつ、このスープがきっかけで、海の森の問題(※)のことなども知り、何か少しでも行動に移したいという気持ちになってもらえたらいいなと思います」

(※)海水温の上昇により、海藻が茂る藻場=海の森が減少してしまう現象「磯焼け」が全国的に大きな問題となっている。アイゴは海藻を食べる魚のため、この磯焼けの原因のひとつと言われている。磯焼けが広がれば、魚が藻場で産卵できなくなるなど、今まで食べていた魚が食べられなくなる可能性も。


写真:大塚敬太

インフォメーション

アイゴと夏野菜のサフランブイヤベースと海藻サラダの「海の森スープセット」1380円(税込)ランチタイム(11-15時)のみドリンク付き


須山シェフが考案したアイゴのスープは、2022年8月12日(金)まで開催の展覧会「海の森、海のいま展ー海のレシピプロジェクトと新たな航海のはじまりー」の会期中にスパイラルカフェにて食べることができる。

写真(スープセット):高村瑞穂