地域で愛されるハタハタの未来
[秋田県 八峰町]
2022.10.31 UP
「秋田名物八森ハタハタ…」から始まる秋田音頭でおなじみの、ハタハタ。北海道沿岸や日本海に生息している魚だ。現在、秋田音頭に登場する八森町は合併して、八峰町となっている。今年の夏、新宿にオープンした書店「SAKANA BOOKS」で写真絵本『ハタハタ 荒海にかがやく命』に出会い、ハタハタの魅力と、禁漁からの回復と現状を知った。TOPICSでは魚や海好きが情報交換できる新しく誕生した書店の紹介を、そして秋田で愛されるハタハタの物語から、海の未来を見つめてみる。
レシピ
ハタハタは秋田県の「県魚」として知られるが、広く日本海沿岸の各地で愛されている。泳いでいるよりも海底の砂に潜っていることが多いためか、浮き袋を持たず、うろこに覆われていないのが特徴だ。うろこを取る手間はないが、粗塩を全体にこすりつけてぬめりを取る下処理を忘れずに。
秋田県をはじめ東北地方や北海道では、11月から翌年初めの産卵期を旬と考え、カラフルな卵も「ブリコ」と呼んで身とともにありがたく味わう。内臓と一緒に取り出して流水にさらし、血抜きをしてから調理すればくせもなく、火を通すと独特の歯触りが楽しめる。
今回は、ハタハタのうまみをシンプルに感じられるよう、たっぷりの煮切り酒と昆布の出汁で塩煮に。強火で煮汁を対流させ、短時間で煮るのがふっくらと仕上げるコツだ。残った煮汁はスープや雑炊にして、余すことなく味わい尽くそう。
材料(2人分)
水 200㎖/昆布 4g/ハタハタ(大)2尾/生姜 1/2片/生しいたけ 2枚/長ねぎ(白い部分)1本/酒 100㎖/塩 小さじ2(4g)/すだち 1/2個
手順
1)ボウルに水と昆布を入れ、3時間以上おく。
2)ハタハタはヒレの棘に注意して表面に粗塩適量(分量外)をこすりつけ、洗ってぬめりを落とす。エラと内臓を除き(卵があれば取っておく)、内側の血合いや汚れをきれいに洗う。水気をよく拭き、軽く塩(分量外)をふって10分ほどおく。
3)ハタハタの卵はボウルに入れて流水を細く注ぎ続け、30分以上さらして臭みを取る。
4)生姜は半分に切り、一方は包丁の腹を当ててたたきつぶす。残りは仕上げ用に、ごく細い千切りにする(針生姜)。長ねぎは3cm長さに切ってフライパンに並べ、中火で両面に焼き色をつける。しいたけは石づきを落とし、食べやすい大きさに切る。
5)小鍋に酒を入れて中火で煮立たせ、アルコールを飛ばし、分量の塩を加えて溶かす。
6)ハタハタがちょうど入る大きさの鍋に、1)の昆布水と5)の酒、4)のたたきつぶした生姜、長ねぎ、しいたけを入れる。水気を拭いた2)のハタハタと3)の卵を重ならないように加える。紙蓋などで落し蓋をし、強火にかける。
7)沸騰して灰汁が出たら取り除き、時々ハタハタと卵に煮汁をかけながら3分ほど煮る。煮汁ごと器に盛り、4)の針生姜をのせてすだちを添える。
料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。
文:奈良結子
写真:高村瑞穂