海のレシピ project

Susaki

初物カツオ、男の“粋き”ざま

[高知県 須崎市]

2021.10.01 UP

料理をする文豪の表現力は、読む人の空腹感を一気に呼び起こす。料理名人の文豪としても知られる檀一雄は、料理エッセイ『壇流クッキング』で自らの初鰹への好奇心を江戸っ子の初物好きになぞらえた。粋な江戸っ子たちがこぞって求めた初鰹。土佐のカツオ漁師たちに愛される戻り鰹。日本と関わりの深い魚“カツオ”を、今こそ味わい尽くしたい。

レシピ

鰹のタタキ風ステーキ

[カツオ]

古来から日本で獲られてきたカツオ。石器時代の貝塚にカツオの骨が発見されているというほど、その歴史は長い。鎌倉・室町時代から戦国時代にかけてカツオ漁が盛んになり、江戸時代には広く好まれるようになっていたという。春から初夏、太平洋岸を北上する時期に獲れる“初鰹”は、初物好きの江戸っ子の大好物。9月頃に黒潮に乗って南下してくると“戻り鰹”と呼ばれ、脂が乗った身は刺し身で食べるのが一番だ。

生のカツオの表面を炙って、薬味と共にいただく「カツオのタタキ」は、その豪快さもあってまさに漁師料理の代表格。塩を叩くようにすりこむことから、カツオ漁が盛んな土佐地方でタタキと呼ばれるようになったという。現在、高知では少し傷んだカツオを食べるための調理法でもあるという、タタキ。家庭で美味しく味わえる方法を教わった。

参考文献:静岡県水産試験場「碧水」第35号
https://fish-exp.pref.shizuoka.jp/04library/4-7/pdf_hekisui/hekisui_035.pdf

[作り方]

今年はカツオが豊漁の年。手に入ったら、人気のカツオのタタキをフライパンで手軽に作ってみたい(ガスコンロがあれば、網などを使って直焼きで焼くとより美味しく作れる)。カツオを自分でさばくのもいいし、スーパーで買ってきた柵でも大丈夫だ。

ポイントは、フライパンをあらかじめしっかり温めておくこと。カツオがフライパンにくっつかない程度に身に油を塗っておき、皮は20秒、その他の面は5秒ずつサッと焼く。塩を振ったら手でなじませ、冷蔵庫で粗熱を取る。カツオを焼いたフライパンは洗わずに、そこでタレを作る。カツオの表面に縦に切り込みを入れたら、1cm程度の厚さにカット。そしてタレを全体にかける。薬味の小ネギやミョウガは大きめに切り、水にさらして辛味を抜いておこう。カツオと薬味を豪快に大皿にのせ、味付け用の調味料を添えれば彩り豊かな漁師料理の完成だ。

材料 4人分
鰹(出来れば皮付き) 1冊/酒 大さじ3/太白胡麻油、サラダ油、グレープシード油など 適量/味醂 大さじ1/塩 2つまみ/濃口醤油 大さじ2/大葉 5枚/米酢(レモン汁、カボスなどでも) 大さじ2/茗荷 2個/カレー粉 適量/万能葱 2本/柚子胡椒 適量/新生姜 1かけ/七味 適量/水菜 1束/溶き辛子 適量

作り方
1)大葉、茗荷、新生姜は千切りにする。万能葱と水菜は3cm長さに切る。大葉と茗荷と万能葱、水菜はさっと水にさらしてよく水気を切る。
2)鰹は水気をよく拭いて長さを半分に切り、両面に油を塗る。
3)鰹がちょうど入るくらいの鉄製のフライパンを火にかけしっかりと熱する。2)の鰹を皮目から入れ20秒ほどしっかり皮に焼き色が付いたら、身側は5秒ほど焼き付ける。バットなどに取り出して、塩をふりかけ馴染ませる。
4)3)のフライパンに酒と味醂を加えて余熱でアルコールを飛ばし、濃口醤油を加え火をつけて一煮立ちさせたら米酢を加えて火を止める。タレの粗熱が取れたら鰹に大さじ2ほどかけて全体に馴染ませ、そのまま冷蔵庫で冷やす。残りのタレも冷やしておく。
5)4)の鰹を1cmほどの厚さに切って皿に並べ、上からタレを適量かける。薬味類を添え、残りのタレと、カレー粉、柚子胡椒、七味、練り辛子も添える。薬味と一緒に好みでタレやスパイスをかけながら食べる。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。

写真:高村瑞穂