海のレシピ project

Nishihara

矢印に向かう、スルメイカの航路

[沖縄県 西原町]

2021.10.20 UP

「やぎさん ゆうびん」「ぞうさん」など誰もが知る童謡を作詞したことでも知られる、詩人まど・みちお。身近な生きもの、植物、モノから宇宙まで、この世にあるすべての命への尊敬の念をを詩に書いてきた。1969年に発表された「するめ」は、人間の手によってするめになってしまったスルメイカを詠んだ、わずか28文字の詩。他の命の犠牲の上に私たちは生きているのだという、まど・みちおからの小さなメッセージだ。

レシピ

自家製塩辛 白造り

[スルメ]

まどみちおの詩「するめ」のように、スルメイカといえば干して乾物になったするめが思い浮かぶ。しかし生のスルメイカは刺し身やイカ焼きなど様々な料理に変身する。ここでは料理家の大黒谷寿恵さんに、スルメイカを使った旨味たっぷりの自家製塩辛の作り方を教えてもらった。さばくことさえできれば、その後はとても簡単。スルメイカの体の構造もじっくり楽しめるはずだ。

[作り方]

スルメイカをさばく。左手の親指で軟甲を引っ掛け、右手でイカの腕を右方向に引っ張る。イカのみみとも呼ばれる、「矢印」の部分をエンペラというが、エンペラを胴体からはずして皮を剥く。胴体の中に残った軟骨を抜き取り、肝は取り分けておく。胴を湯通しして氷水に取ったら、胴体の外側はキッチンペーパーなどを使って繊維質を剥く。イカの甘味を引き出すために胴の両面に薄く塩を塗り、できれば一晩冷蔵庫に入れておく。一日おいたほうが味がなじんでおいしくなる。

参考:スルメイカの捌き方
How to filet Japanese Common Squid -|日本さばけるプロジェクト(海と日本プロジェクト)
https://www.youtube.com/watch?v=s1ACMcA1l14

スルメイカをさばき、墨袋を慎重に取り除いた肝は、塩でたっぷりと振り固め、5時間ほど冷蔵庫に置く。肝が持つ独特のほろ苦さのおかげで、市販品にはない旨味を加えてくれる。一晩置いたイカの胴を洗って水分を拭いたら、横向きに置いて5cm幅に切り、さらに薄く縦に切る。イカの繊維は横に入っており、それを断つように切ると旨味を感じやすい。大黒谷さんが使ったスルメイカは身が厚かったため3mm幅と薄く切ったが、幅はお好みで。肝をより絡めたい場合は、削ぐように切って断面を大きくするのもいい。最後に、肝とイカの身を和えたら完成。肝の強い香りが苦手なら、煮切った酒を小さじ1弱混ぜてみるといいだろう。「大きなスルメイカが手に入ったらぜひ塩辛を作ってみてください。冷蔵庫保存で5日間はおいしく食べられますよ」(大黒谷さん)

材料 4人分
するめいか 1パイ / 塩 適量 / 肝 1パイ分 / すだちの皮 少々

作り方
1)するめいかは捌いて、エンペラを外し皮を剥いて、軟骨を取り除く。65度くらいの湯の中でさっと湯通しして
すぐに氷水に取る。外側の繊維質を取り除いて、両面に塩を薄く振って冷蔵庫にできれば一晩保存する。
2)墨袋を取った肝に塩をたっぷりとふり、5時間ほど冷蔵庫で置く。さっと水洗いして水気を拭き、薄皮から肝を取り出し裏漉す。
3)1)のイカの胴をサッと洗ってよく水気を拭き、5cm長さに横に切って、3mm幅で縦に切る。
4)ボウルに2)と3)を入れてよく和え、できれば一晩以上寝かせてから食べる。器に盛り、すだちの皮を散らす。
好みでいしりやすだちの果汁を少し垂らしても美味しい。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。

写真:高村瑞穂