ブリが来遊するリアス式海岸
[大分県 佐伯市]
2022.05.12 UP
食材の調理方法は身体にどのように影響するか。江戸時代に書かれた『本朝食鑑』に、日々の食事が健康を維持していくという「薬食同源」の考え方を読むことができる。歴史に学び、日本の食文化、食生活を見直すことも未来への行動の第一歩。
トピックス
海は“いのちき”そのもの
漁港で水揚げされても、食用としての需要が少なかったり、大きさがそろわないとか、量が少ないなど、様々な理由で市場に出回らない未利用魚。その一尾の命も大切にしたいと、大分県佐伯市の「漁村女性グループめばる」は日々、魚の加工品づくりに取り組んでいる。
「グループを結成したのは平成16(2004)年です。そのころから魚食離れは進んでいて、おいしい魚なのになぜ売れないのかって疑問でした。グループで、鮮魚や活魚を地元の朝市や県のイベントがあったときに販売していて感じたのは、魚を一尾のまま扱える人が少ないということです。年配の人でも3枚におろせる人はほとんどいなかった。これはもう、口元まで持っていけるような加工品でないと食べてもらえないだろうと、加工品をつくることにしたのです」と、グループめばるの桑原政子さん。
自分たちでできることは、すり身や干ものをつくることだが、それらはすでにどこでもやっていること。「なにかよそではやっていないこと」と考えたときに、佐伯では日常的に食べられていた伝統的な調味料でありながら、当時まだ市販されていなかった「家でつくるごまだし」の瓶詰めに思い至った。桑原さん曰く、「ごまだし」は、手軽に使える万能調味料。
「魚のあるときに焼いてほぐして、醤油、みりんとごまをまぜておけば、漁で忙しいときにもパパっとかけて食べられる、それがごまだしで、それぞれの家庭の味があり、みんな少しずつ違うのですが、基本は、焼いた魚に醤油とたっぷりのごまを練り合わせることです」
食材となる魚は、エソ、タイ、アジが定番。エソは、小骨が多いため、すり身にされることがほとんど。タイやアジも豊後水道でとれたものが、新鮮なうちに加工されている。一般的になじみのない魚もある。
「シイラは全長が1メートルぐらいあるのですが、シイラを食べる文化が地元にはなく、岸壁にほおっておかれているんです。形をみると、あまりおいしそうではないんですよね。でも、一尾の魚にもいのちがある。ごまだしにしたところ、おいしくて、調味料の大会で賞ももらったんですよ。すでによく知られた魚種でおいしい魚はいっぱいありますが、まだ食べたことのない魚でも、調理してみるとおいしいものや、手間をかければおいしくなるものもたくさんあるんですね」
グループめばるは、魚食の普及とともに、地域活性も活動目標の一つとしている。拠点である佐伯市鶴見で水揚げされる旬の魚を使い、春はサワラ、夏はスズキなど、季節限定のごまだしを商品にする準備も整えている。
「海は“いのちき”そのものです。海の近くにいるから、おいしい魚を常に食べています。ヒイラギ(ダイチョウ)は干ものにして焼くとおいしいし、すり身にするともっとおいしい。でも手間がかかりすぎる。手間ひまかかるところがおばちゃんたちの出番じゃないかと思うんです。これからも手づくり感は絶対に残していきたいです」
お話を伺った人
漁村女性グループめばる
桑原政子さん(前列・中央)
※いのちき
大分の方言で「生活」「生計」のこと。
漁村女性グループめばるのみなさん
(小谷晃文さん、山崎千歳さん、仲谷勢津さん、桑原総子さん)
海のレシピ・オススメ食材
漁村女性グループめばるの佐伯ごまだし
白身魚を焼き、胡麻・みりん・砂糖と一緒にすり合わせ、醤油を足して仕上げた大分県佐伯市の万能調味料。良質な魚が豊富に水揚げされる佐伯地方で年間を通して水揚げが多い白身魚「エソ」と、「アジ」「タイ」の3種類あり。
アジ(茶) / タイ(赤) / エソ(白)
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