海のレシピ project

Goto

海の循環がもたらす未利用魚の価値

[長崎県 五島市]

2021.10.09 UP

日本の沿岸各地では、古くから大漁の祝い歌や船こぎ歌など、漁にまつわる民謡が歌い継がれている。長崎の『五島ハイヤ節』もその一つで、この歌には独特の踊りが加わる。航海の安全と大漁・豊作祈願とされているが、漁で夫を亡くした妻が気を紛らわすために浜辺で踊ったのが始まりだそう。海の豊かさと怖さを知る地元の人たちはたくましい。最近では、“ 未利用魚 ” とされる魚種に付加価値をつけ、新たな循環をつくりだしている。

レシピ

Soup Stock Tokyo 連携企画「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」

[未利用魚]

“未利用魚”とは、サイズがふぞろいだったり、漁獲量が少ないなどの理由から低い価格でしか評価されない魚のこと。長崎県五島では、一般的にあまり知られていないブダイ、ニザダイ、イスズミなどが未利用魚・低利用魚として扱われている。

[作り方]

おいしいものを求めて全国各地の食材の産地で、さまざまな生産者と出会い、未来のおいしいのためにできることを考え続ける Soup Stock Tokyo は、今年初めて“未利用魚”を使ったスープを開発。『長崎県五島産すり身団子のスープカレー』として全店舗にて、10月10日(日)~22日(金)の13日間、期間限定で提供する。Soup Stock Tokyoでレシピの開発に携わるシェフ・須山裕之さんに、お店で提供するスープカレーを自宅で作れるレシピにアレンジしてもらった。

基本的に、クミンとバジルをバターで炒めるところから材料を順番に加えて炒めていくだけという、いたってシンプルな作業。最初に気をつけるポイントは、タマネギを炒めるところ。スープカレーなので、飴色とまではいかなくても、タマネギの甘さをある程度出すことが大事。トマト缶を加え、フライパンに焦げ付いた具材を剥がしながら炒めることで、旨味やコクにつながる。
すり身は、ふわっとしたボール状に仕上げるため、スプーン2本を使って丸くするのがおすすめ(ディッシャーでも可)。お好みで野菜はオリーブ油で素揚げにして盛り付ける。根菜など、固めな野菜は、電子レンジで温めてからソテーにしてもよい。

材料2人分
バター25g / クミンシード 2g 約小さじ1 / バジル(乾燥)0.8g 大匙1/2 / タマネギ 100g 約1/2個 / ニンニクすりおろし2.5g 小さじ1 / ショウガ すりおろし 1g 小さじ 1/4 / カレー粉 7g 大匙1 / イエローカレーペースト(市販品)5g 約小さじ1/トマト缶 100g /水 500g /ブイヨン 1 個/ハチミツ 6g 小さじ2 / 五島の醤(醤油麹)7.5g 大匙 1/2 / すり身 140g 約 10個分/かつお節粉 2.5g 小さじ2 / 塩 2.5g 小さじ 1 / オリーブ油(揚げ、炒め用)適量 / 野菜(なす、ピーマン、レンコン、カボチャ、シメジ、ヤングコーン)/ウズラの卵

作り方
1)バター、クミン、バジルを中火で炒める。バターが泡立ち、クリーム状になるまで炒める。
2)みじん切りにしたタマネギを 1)に加え、タマネギがこびり付くぐらい炒める。
3)2)にニンニクとショウガ(どちらもチューブ)を加える。焦がさないようにするためにタマネギを炒めきったこのタイミングで入れる。
4)カレー粉とイエローカレーを加え、さっと炒めて香りを立たせる。
5)トマト缶(ここではダイスカットされたものを使用)を加え、フライパンにこびり付いた具材を剥がしながら炒める。
6)水、ブイヨン(あればチキンコンソメ)、ハチミツを順次加える。
7)ボール状にしたすり身を 6)に入れる。
8)かつお節粉(かつお節でもよい)、五島の醤、塩を加えて味を整える。
9)オリーブ油で野菜を素揚げする。根菜は低い温度から。レンジで温めてから、ソテーにするのもよい。

生産者さんや素材の背景を考えて調理をすること

Soup Stock Tokyo のシェフ・須山裕之さん

未利用魚という言葉については、クラゲとかサメが入るのかなというようなざっくりした感覚はあったのですが、土地や地域によっても未利用魚と呼ばれる魚種が違うこと、知らない魚がたくさんあることに改めて気づかされています。今回、未利用魚を使ったメニューを開発するに当たり、そういう魚の特性を知ることのほかに、磯焼けのこと、魚の胃の中で海藻が発酵するため、独特のにおいがあることなどを自分でも調べてみました。すり身で使用しているニザダイは五島だけでなく、ほかの地域でも捕れ、フライにして食べているところもあるとか。

このプロジェクトでは、魚の味をある程度うまく引き出し、いやなところがわかりづらい食べ方をすることで、素材を味わえるようにしました。普通のつみれ汁のように扱うとダイレクトに魚の味を感じてしまうことから、スープカレーがいいのではないかと。今回は生のすり身をお店で調理するので、素材のニザダイやトビウオの出汁が出る。うまみ出汁の部分は Soup Stock Tokyo らしさが出せるところです。それも含めてスープカレーがいいかなと
考えました。味の骨格となるのはすり身団子ですが、スープカレーとしてメニューを完成させるため、浜口水産さんと何度かやりとりをしました。最終的にこのすり身は、つなぎにタピオカが使われています。スープに隠し味として使っている『五島の醤』は、バイヤーの松尾琴美さんから教えてもらいました。

素材にフォーカスしたり、素材自体にストーリーがある、生産者の思いや背景を考えて調理をすることは、Soup Stock Tokyoらしさに通じると思います。
食事なんだけれど、それがひとつの作品ということです。

ここで紹介しているレシピは、この材料でつくるとこんな味になりますよ、という提案です。たとえば、ハチミツを砂糖にかえてもいいし、市販されているイワシのつみれを使ってもいい。あくまでも一つのきっかけとして、自由にアレンジして楽しんでもらえれば僕はいいと思っています。

インフォメーション

長崎県五島産すり身団子のスープカレー
10月10日(日)~22日(金)の13日間、Soup Stock Tokyoの全店舗(※中目黒店、ルミネ北千住店を除く)にて期間限定で販売

写真左から、「海のレシピプロジェクト」のメンバーと一緒に五島を訪れ、「長崎県五島産すり身団子のスープカレー」の商品開発に関わった生産者さんを取材した「SoupStockTokyo」バイヤーの松尾琴美さん、五島の椿酵母を使って商品展開をしている「五島の椿株式会社」の谷川富隆さんと、未利用魚とされている五島の魚を椿酵母で発酵させて仕込み、オリジナルの魚醤油『五島の醤』を作り出した「金沢鮮魚代表」の金澤竜司さん。

SoupStockTokyo さんによる取材記事はこちら
https://www.soup-stock-tokyo.com/sst_sdgs_5

海のレシピプロジェクト
Topics page:五島の海の未来に向けて、今できること
https://uminorecipe.jp/articles/kyushu/goto/357

海のレシピ・オススメ食材

五島の醤
五島の椿由来の椿酵母を使用した魚醤。魚の旨味はそのままに、従来の魚醤の臭みを抑えた一品。醤油麹、米麹を使った2種類あり。
https://shop.gotonotsubaki.co.jp/collections/goto-hishio

写真:高村瑞穂