生態系を支える海藻たちの森を目指して
[熊本県 天草市]
2024.01.25 UP
これまで海のレシピprojectでも取り上げてきた、海の森と呼ばれる「藻場」の減少について。その問題に真正面から向き合い、未来の担い手として飛躍を続けるシーベジタブルの背景に迫る。「レシピ」では自家製の花椒オイルと高相性のハバノリの油そうめんを、「ものがたり」では古来から日本人の琴線に触れてきた、海藻の文様と色を紹介する。
レシピ
ハバノリは、名前に「のり」とあるものの、実は昆布の仲間。昆布よりも薄く柔らかいので、乾燥させてそのまま、あるいは炙ってパリパリと味わうことができる。独特の磯の香りとほのかな苦味は、何かを加えて「やわらげる」のではなく、スパイス感覚で「生かす」ほうが面白い。ゆでたそうめんにかけるだけでもよいが、ナンプラーや花椒のようにくせのある風味を合わせることで互いの個性を引き立て合い、不思議なことに、単独で使うよりも食べやすい味に仕上がる。ハバノリに塩気があるので味付けは控えめに。すだちを搾ったり、おろし生姜を混ぜたりして香りに変化をつけると、最後まで食べ飽きることがない。
本来は全国各地で採取され、千葉県や神奈川県などではお正月の縁起物として親しまれているが、近年の海水温上昇で成育環境が変わったり、藻食魚の活動時期の長期化・活動範囲の広がりなどで生産量は少なくなる一方。今回使ったのは、そんなハバノリを「もっと身近なものに」と開発された海面栽培の生産物だ(Topics「海にも人にも寄与する海面藻場が広がる世界へ」参照)。さまざまな海藻を日常的に、意識的に、食事に取り入れてみよう。海藻の食文化を守り、発展させる。そのために私たちができる小さな一歩として。
材料(2~3人分)
そうめん(乾)3束(150g)/ハバノリ 3g/新生姜(すりおろし)1/2片分/すだち 1個
■香味オイル
ナンプラー 10㎖/水 20㎖/花椒オイル(下記参照)25㎖
手順
1)ボウルにナンプラーと水を入れて泡立て器で混ぜ、花椒オイルを少しずつ加えながら白濁するまでよく混ぜて香味オイルを作る。
2)小さめのフライパンにハバノリを入れて中火にかけ、香りがたつまで乾煎りして取り出す。
3)鍋にたっぷりの湯を沸かし、そうめんを袋の表示通りに茹でる。湯は捨てずに麺をざるに取り、流水でもみ洗いしてぬめりを取る。もう一度鍋の湯にくぐらせて温め、ざるに上げてしっかりと湯をきる。
4)1)のボウルにそうめんを加えて手早く和え、器に盛る。ハバノリをのせ、半分に切ったすだちと新生姜を添える。
1)花椒・青山椒各10gをボウルに入れて湯大さじ2を回しかけ、ラップをして20分ほど蒸らして香りを出す。
※青山椒は赤く熟す前の若い実を乾燥させたもの。なければ花椒20gでもよい。
2)ボウルの底に湯が残っていたら捨て、蒸らした実を紙タオルに広げて水けを押さえ、乾いた耐熱ボウルに入れる。
3)小鍋に米油(またはサラダ油、なたね油などくせのないもの)150㎖を入れて弱めの中火にかけ、150℃(煙が立つ直前くらい)に熱して2に少しずつ回しかける。そのまま冷まし、ラップをして一晩おき、香りをなじませる。
4)ペーパータオルでこし、清潔な瓶に移す。常温で約1か月間保存可能。
料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。
文:奈良結子
写真:高村瑞穂
インフォメーション
地下海水等で育て、乾燥させたハバノリ。他の海藻と一線を画す風味が特徴で、山菜のような苦味と青みを感じる香りがある。今回の花椒オイルとの相性も抜群。
https://seaveges.com/products/habanori