海のレシピ project

Kobe

春を告げる魚と、夏を告げるフラッグ

[兵庫県 神戸市]

2023.05.31 UP

山と海の距離が近く、そのあいだに栄える街との景色が特徴的な神戸。須磨海岸は“ブルーフラッグ”を2019年に取得し、ますます「誰もが楽しめるビーチ」となって私たちを迎えてくれる。関西を代表するビーチの取り組みとともに、「レシピ」では西日本と瀬戸内の春告魚・鰆を、「ものがたり」では四季折々の魚の名前が心地よく響く大岡信の詩を紹介する。

レシピ

鰆のクリーム煮 レモン風味

[鰆]

鰆はサバ科の回遊魚。「魚偏に春」と書くが、産地は北海道南部から沖縄までと広く、旬の時季は地域によって異なる。東日本では、晩秋から冬の脂ののった寒鰆が好まれるが、西日本で鰆といえば、何といっても瀬戸内海で獲れる産卵期のものがポピュラーだ。
もっとも定番の食べ方は「西京焼き」だが、ここではレモン風味のクリーム仕立てで春らしい一皿に。みそに漬けるかわりに、はちみつやハーブなどでマリネして、柔らかくて淡泊な身に味を浸透させつつしっとりとさせる。ほろ苦い菜の花の付け合わせと、とろみをつけない軽やかなソースで、「春告魚」らしい魅力を堪能したい。

[作り方]

材料(2人分)
鰆(切り身)2切れ(200g)

■鰆の下味
はちみつ 小さじ1/2/塩 小さじ1/2(鰆の重量の1.5%)/レモン汁 小さじ1/ローズマリー(乾燥)ひとつまみ /タイム(乾燥)ひとつまみ/オリーブ油 大さじ1/2

■煮汁
昆布 2g/水 120㎖/玉ねぎ 1/4個/バター 10g/オリーブ 小さじ1/塩ひとつまみ/白ワイン 大さじ2

■ソース
濾した煮汁全量/レモン汁 大さじ1/生クリーム 大さじ2/塩 適量/レモンの皮 少々

■菜の花のソテー
菜の花 1/2束/オリーブ油 大さじ1/2/塩ひとつまみ


作り方
1)煮汁の昆布は水につけて3時間以上おく。玉ねぎは縦に薄切りにする。

2)鰆に下味をつける。鰆は皮と骨を取り除き、両面にはちみつを塗る。塩、レモン汁、タイム、ローズマリー、オリーブ油をからめ、ラップで包んで冷蔵庫で30分以上おく。

3)菜の花をソテーする。菜の花は2~3等分に切る。小さめのフライパンにオリーブ油を入れて中火で熱し、菜の花を入れ、あまり動かさずに焼き付ける。途中で塩をふって裏返し、さっと火を通して取り出す。

4)煮汁をつくる。鰆がちょうど入るくらいの鍋にオリーブ油とバターを入れて弱めの中火で溶かし、玉ねぎを炒める。塩をふり、甘みが出るまで焦がさないようにじっくりと炒める。白ワインを加えてアルコールを飛ばし、1)の昆布と水を加える。

5)鰆を煮る。煮汁がふつふつとしてきたら昆布を取り出し、鰆をラップから出して加える。煮汁をすくって鰆にかけ、沸騰してきたら弱火にし、時々煮汁を回しかけながら3分ほど煮る。鰆に火が通ったら取り出し、鍋に残った煮汁を濾して鍋に戻す。

6)ソースをつくる。濾した煮汁にレモン汁と生クリームを加えて温め、味をみて塩で調える。3)の菜の花をさっとからめて器に盛り、次に5)の鰆もさっとからめて盛る。残ったソースをかけ、レモンの皮をすりおろしてふる。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。


文:奈良結子
写真:高村瑞穂