海のレシピ project

Tsukiji

大海へ出て、故郷に戻る、鮭

[東京都 築地]

2021.12.12 UP

江戸時代から冬の贈答品とされてきた塩鮭は、絵師の長沢蘆雪(1754-1799)が墨絵で描き、葛飾北斎(1760-1849)が肉筆画帖に残している。北斎は明るい色彩で緻密に描かれているが、絵であることは一目瞭然だ。ところが、幕末明治期に高橋由一が油絵で描いた『鮭』は、質感があり、まるで本物みたい。日本の油彩の黎明期に思いをはせながら、鮭の未来を考えたい。

レシピ

生鮭の中華風炒め

[生鮭]

鮮魚店やスーパーマーケットなどで一年中、目にする鮭。一般的に日本で鮭といえば、白鮭を指し、この種は川で生まれ、成長期に外海を回遊しながら成長し、数年後に産卵のため、生まれた川に戻ってくることが知られている。9月から11月が旬とされるこの鮭の新しいおいしさを見つけたい。ここでは、季節の野菜を合わせて、彩りのバランスよく、おもてなし料理にもおすすめの「生鮭の中華風炒め」を提案してもらった。

[作り方]

まず、鮭をさばくには、うろこをとり、表面をよく洗う。腹を切り、内臓を取り除き、中をきれいに洗い流した後、頭の部分を切り離す。身の部分は骨に沿って腹からと背から、それぞれ包丁を入れて三枚におろしたあと、腹骨を取り除き、切り身にする。
切り身は皮をはいで、骨を取り除き、繊維に沿って約1cm幅の棒状に切り、下味として風味づけをする。紹興酒、醤油、片栗粉、胡麻油の順に、全体にまんべんなく絡めるようにして、先に入れたものが吸収されてからを次のものを揉み込む。胡麻油が鮭の旨味や風味をコーティングして、他の具材と合わせたときに一体化させてくれる。
牛乳と片栗粉を溶き混ぜた卵白液を手早くふんわりと炒めながら、いったん油通し(素揚げ)しておいた具材を絡めて仕上げる上品なひとさら。おもてなし料理としてもおすすめ。

材料 4人分
生鮭2切れ(約200g) / 紹興酒 小さじ2 / 醤油 小さじ1 / 胡麻油 小さじ1 / 片栗粉 小さじ1 / 長芋 10cm / 銀杏 16個 / エリンギ 2本 / 卵白4 個分 / 牛乳100g / 塩 小さじ1/3 / 片栗粉 大さじ1 / 太白胡麻油 大さじ2 / 生姜 1/2かけ / 揚げ油 適量 / 花椒 適量


作り方
1)生鮭は皮を剥いで、骨を取り除き、約1cm幅の棒状に切る。紹興酒、醤油、片栗粉、胡麻油の順に先に入れたものが吸収されてからを次のものを揉み込んでいく。
2)長芋はひげ根を炙って取り皮ごとたわしで洗い、鮭と同じように切る。エリンギも同様に切る。銀杏は殻を割っておく。
3)揚げ油を140℃に温め、1)の銀杏を入れてお玉の背などで転がしながら1分ほど揚げて薄皮を剥く。次に160℃に上げて鮭を2〜3回に分けてくっつかないようにしながら1分ほど揚げて油を切る。
4)長芋とエリンギは180℃の油で30秒ほど揚げて油を切り、塩をひとつまみ振っておく。
5)牛乳に塩と片栗粉をよく溶き混ぜて、箸で溶きほぐした卵白の中に入れて混ぜる。フライパンを温め、太白胡麻油と千切りの生姜を加えて香りが出たら卵白液を流し込み強火にして、大きくゆっくりとかき混ぜながら加熱する。
6)5)の卵白に完全に火が入る前に油通しした材料も加えて混ぜ合わせて皿に盛る。好みで花椒を振る。

*長芋とエリンギは鮭の大きさに合わせて、切りそろえると、見た目もよく仕上がります。
*それぞれの具材を180℃の揚げ油で揚げるときは、一度にたくさん入れると油の温度が下がってしまうので、小分けにして揚げましょう。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。

写真:高村瑞穂