海のレシピ project

Miura

海と海のある風景を愛するものたち

[神奈川 三浦半島]

2022.12.28 UP

海のそばで暮らすと、その先に見える土地、さらには外国にまで思いを馳せてしまうのかもしれない。三浦半島が舞台の小説『港、モンテビデオ』で描かれる観音埼灯台。地理的要因と近代化する日本の歴史とが混ざり合った建造物であり、現在も役割を果たしながらシンボルとして佇んでいる。登った先に見えたのは世界を行き来する船と、果てなく広がる海だった。

レシピ

マグロの自家製ツナ

[マグロ]

観音埼灯台の位置する三浦半島の特産物は数々あるが、なかでも一番人気は「三崎のマグロ」。市内の市場や直売所でマグロを買うなら、ぜひ、切り身ではなく柵を選んでほしい。贅沢に丸ごとオイル煮にして、自家製のツナを楽しんでみてはいかがだろう。
マグロはどの部位でもよいが、しっかり2㎝は厚みがあるものを。塩糀とはちみつを塗っておくのは、マグロのくせを抑えるとともに、水分を逃さずしっとりと仕上げるための下ごしらえだ。オリーブ油だけで煮ると冷蔵庫で保存する間に固まってしまうので、ひまわり油や太白胡麻油などを合わせ、好みのハーブやスパイスを加えて弱火でゆっくりと煮る。直火で煮続けてもよいが、油が温まってきたら低温のオーブンに入れると火の当たりが柔らかくなり、やさしく火が通る。

刺身を煮てしまうの? こんなに油を使うの? 最初はちょっともったいない……という気もするが、香りがよくて肉のように食べ応えがあるリッチな味わいには、きっと誰もが大満足。うまみの移ったオイルも、パスタに、ソテーに、野菜のオイル煮にとむだなく使え、むしろ「これはお得!」と感じてもらえるはずだ。

[作り方]

材料(つくりやすい分量)
マグロ(約2㎝厚さ)1柵(200g)/塩糀 20g(マグロの重量の10%)/はちみつ 小さじ1/2/にんにく 1片/ローリエ 1枚/赤唐辛子 1本/タイム 1枝/黒胡椒(粒)10粒/ひまわり油(または太白胡麻油、菜種油)50㎖/オリーブ油 適量
※ハーブ、スパイスは好みのものでよい。ローズマリー、フェンネル、コリアンダーなどもおすすめ。

手順
1)マグロは塩糀とはちみつを全体に塗り、冷蔵庫に30分ほどおく。
※塩糀の代わりに塩小さじ2/3(マグロの重量の2%)、はちみつの代わりに砂糖小さじ1/2でもよい。

2)にんにくはたたきつぶし、皮と芽を除く。ローリエは直火でサッと炙る。赤唐辛子はヘタを切って種を抜く。
※辛味が出すぎないように種を抜くため、赤唐辛子が割れていなければそのまま入れてもよい。

3)マグロの水気をペーパータオルでしっかりと拭き取り、ぴったり入るサイズの厚手の鍋に入れる。2)とタイム、黒胡椒、ひまわり油を加え、マグロが浸るくらいまでオリーブ油を注ぐ。

4)3)の鍋を弱火にかけ、80℃(鍋肌からフツフツと小さく泡立つくらい)になったら、100℃に温めたオーブンに入れて10分ほど加熱する。オーブンから取り出し、そのまま冷ます。
※鍋がオーブンに入らない場合は、ぴったりサイズのホウロウ容器に移すか、オーブンに入れずにそのまま弱火で10分ほど煮てもよい。

5)保存容器に移し、マグロがオイルに浸った状態を保てば、冷蔵庫で1週間ほど保存可能。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。

文:奈良結子
写真:高村瑞穂