海のレシピ project

Wajima

海が育む結晶・塩の世界

[石川県 輪島市]

2024.03.26 UP

人間の身体の約70%を水分が占めるように、地球に対する海の割合も同等のもの。そんな海が育むもののひとつが「塩」だ。海塩を製造する国は、世界的に見ても実はめずらしいという。今回は「低温結晶」の技術を確立して作られる、輪島の海塩を使ったシンプルな料理をはじめ、震災後も輪島朝市の灯をともし続ける人たちを紹介する。絵本「あさいち」が記憶にとどめる風景が、ふたたび目の前に広がる日を願って。

レシピ

塩むすび、レモンとバターと塩のオムレツ、鰤のカルパッチョ

わじまの海塩を味わう3品

[海塩]

「わじまの海塩」は、ミネラルバランスが微妙に異なる色々な大きさの結晶を、人の「手」で絶妙なブレンドを施している。もちろん煮汁やソース、たれなどに加えて溶かしてもおいしいのは間違いないが、この大小の粒つぶを目と舌で「感じる」には、こんな使い方がおすすめだ。
刺身のカルパッチョやふわふわのオムレツの仕上げにパラリ。キラキラと光る塩の結晶は、カリッと歯触りを感じたかと思うとじんわりと溶け、塩味の後にほのかな旨味の余韻が残る。カルパッチョにはバルサミコ酢のゼリーを、オムレツにはレモンの皮のすりおろしを合わせ、それぞれの風味を混ぜずに立たせながら、口中でコンビネーションを味わうという寸法だ。
極め付けは、おむすびの手塩。ミネラル豊富な塩がごはんの甘味をいかに引き立てているか、炊き立てのごはんの温かさでほどける塩気がどれほどやさしいものか、などは語るに落ちるというもの。具は入れずに米と「わじまの塩」だけで、究極の贅沢をぜひ体験してほしい。

[作り方]

塩むすび

材料
炊き立てのごはん 適量/わじまの海塩 適量

手順
1)海塩は小さな器に入れておく。手はきれいに洗い、やけどをしないように一旦冷水につけて冷やし、水気を拭く。

2)3本の指で塩をつまみ、片方の手のひらに広げる。おむすび1個分のごはんをのせて、もう一方の手を軽くかぶせ、5回ほど回転させながら握る。

[作り方]

バターとレモンと塩のオムレツ

材料(1人分)
卵 3個/牛乳 小さじ2/わじまの海塩 適量/バター(食塩不使用)8g+5g/レモンの皮 適量

手順
1)ボウルに卵を割り入れて牛乳を加え、海塩をほんの少々加えて泡立て器で白身を切るように混ぜる。完全に混ざったら、ザルなどでこす。

2)直径16㎝ほどのフライパンを中火で熱し、手をかざして温かくなっているのを確認してからバター8gを入れる。バターが溶けたら1)の卵液を一気に流し、フライパンを前後に揺すりながら菜箸で混ぜ、外側から固まってきた部分を内側へと混ぜ込んでいく。

3)全体が柔らかめの半熟状になったら、火から下ろしてぬれ布巾の上に置く。フライパンの縁に薄い膜ができてきたら再び弱火にかけ、手前側からゴムべらではがすようにして中心へ折り込む。

4)フライパンの向こう側の立ち上がりを利用し、焼けた卵地が少し捲れ上がってくるように、柄を握っている手首をたたき振動を与える。捲れ上がってきたらゴムべらでひっくり返す。さらに1~2度ひっくり返して、とじ目を上にし、フライパンを皿にかぶせるようにして盛る。

5)温かいうちにレモンの皮をすりおろしてかけ、バター5gをのせ、海塩ひとつまみをふる。

[作り方]

鰤のカルパッチョ

材料(2~3人分)
鰤(刺身用)1柵(約200g)/バルサミコ酢 20㎖/板ゼラチン 1/4枚(1.5g)レモン 1/4個/わじまの海塩 適量/エクストラバージンオリーブオイル 適量/ベビーリーフ 適量

手順
1)板ゼラチンは冷水に浸して戻す。バルサミコ酢は小鍋に入れて中火にかけ、3/4量になるまで1分ほど煮詰めて火から下ろす。

2)バルサミコ酢が60℃くらいに冷めたら、板ゼラチンの水けを絞って加える。均一に溶かしてラップを敷いた器に流し、冷蔵庫で冷やし固める。

3)ボウルに氷水を張り、塩大さじ1を加えて溶かす。ペーパータオルで水気を拭いた鰤をくぐらせてさっと洗い、臭みを取る。水気をよく拭き、3㎜厚さに切って器に並べる。

4)レモンを搾って回しかけ、海塩を振り、オリーブオイルを回しかける。2)のバルサミコ酢ゼリーをスプーンですくって散らし、ベビーリーフをちぎってあしらう。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。


文:奈良結子
写真:高村瑞穂

インフォメーション

自然豊かな日本海・輪島で取水した、清浄で滋味あふれる海水を原料に、釜炊きをせず、海水の上から体温と同程度の熱をあてて低温でゆっくり蒸発・濃縮させて結晶化させた塩。溶けやすく、素材への馴染みがよい海塩。
https://www.wajimanokaien.com