謎めく神秘的な“春の風物詩”を追って
[富山県 魚津市]
2023.04.25 UP
闇夜でほのかに青く光り、春の風物詩と称される風景を作り出すこともある“富山の神秘”はなぜ私たちを魅了するのか?魚津へ向かって学んだのは、まじまじと観察することでわかる姿かたちと、求めるほどわからない生態だった。「レシピ」ではそのホタルイカと春野菜を使ったナムルを、「ものがたり」では人生を豊かにしていく「食」にまつわる映画『川っぺりムコリッタ』を紹介する。
レシピ
目の周りや腕先、皮膚に発光器を持ち、夜の海で蛍のように幻想的な光を放つホタルイカ。主な産地は兵庫県と富山県だが、春まで禁漁期間を設けて成長させたものを定置網漁で獲る富山湾のホタルイカは、身も大きくて傷が少ないことから人気も高い。
流通しているホタルイカはボイルされたものが一般的だが、さらに細かい下処理が必要だ。小さなイカの硬い目と口、軟骨を骨抜きで取り除くのには少しコツがいるが、そのままでは口当たりが悪くなるので省かずに。
ぷっくりとしたホタルイカをコチュジャンだれで和えれば、コクと辛みでワタのくせが和らいで食べやすくなる。合わせる春野菜も塩と油を加えた熱湯で歯触りよく、つややかに茹で上げ、旬のホタルイカを引き立てよう。
材料(3~4人分)
ホタルイカ(ボイル)20杯/空豆(さやから出す)10~15粒/せり(または三つ葉)8本/うど 10㎝/塩 小さじ2/サラダ油 小さじ1
■コチュジャンだれ
コチュジャン 小さじ1強/米酢 小さじ1/2/醤油 小さじ1/2/胡麻油 小さじ1と1/2/塩ひとつまみ
手順
1)ホタルイカは骨抜きで目を取り、足を広げて根元の口を取り除く。身の内側の軟骨も、下側から引き抜いて除く。
2)空豆は薄皮の黒い筋を取り除く。せりは根を落とし、3㎝長さに切る。うどは3㎝の長さに切って厚めに皮をむき、1㎝角の拍子木切りにして、酢少々(分量外)を加えた水に5分ほどつけてアクを抜く。
3)ボウルにコチュジャンだれの材料を混ぜ合わせておく。
4)鍋に1ℓほどの湯を沸かし、塩とサラダ油を入れて空豆を茹でる。グラグラと沸かない程度の火加減で3分ほど茹でて取り出し、粗熱を取って薄皮をむく。
5)同じ湯にうど、せりをさっと順にくぐらせ、すぐザルに取る。1)のホタルイカもさっとくぐらせて取り出し、それぞれ水気をよく拭く。
6)すべての材料を温かいうちに3)のボウルに加え、手早く和える。
料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。
文:奈良結子
写真:高村瑞穂