海のレシピ project

Itoigawa

鮮やかな紅色をまとう、ベニズワイガニ

[新潟県 糸魚川市]

2022.04.07 UP

古くから語り伝えられてきた日本の昔話は、地域によって少しずつの違いがあるものの、いずれの物語にも人と自然のつながりが背景に見え隠れしている。絵本の『さるかに』は、松谷みよ子の文章に寄せられた長谷川義史の力強い絵によって、読者の想像力を広げ、大海原へ連れて行ってくれるかのようだ。この物語の舞台であろう新潟の海や地形についても考えたい。

ものがたり

『さるかに』

文:松谷みよ子 絵:長谷川義史

人から人へと語り継がれてきた民話には、面白おかしく笑える話や怖い話などがあり、内容は幅広い。児童文学作家の松谷みよ子による『さるかに』は、文化・文政(1804-1830)のころから語られていた日本昔話の代表とされている。

むかし、むかし、猿と蟹が、柿の種とにぎり飯をとりかえっこした。猿は食べてしまえばそれっきりのにぎりめしをとり、蟹は柿の種をまき、育てた。

「はやく めを だせ かきのたね 
めを ださんと ほじくるぞ」

水をやり、肥やしを与えて豊かに実をならせた。それを見ていた猿は、山からおりてきて、真っ赤な実を食べ始め、まだ熟していない青い実を蟹めがけてたたきつけた。蟹はつぶれて死んでしまい、お腹から子蟹がたくさん生まれた。

「あーん あーん、かあさんが しんじゃった」

そこへ、蜂、栗、牛のくそ、臼がやってきて、それぞれの役目を決め、子蟹たちも泣いてばかりはいられないと仲間に加わり、猿をやっつけに行く。

「どしーん
やねから うすが おちてきて
さるは のびてしまったと。」

話はここでおしまい。「しゃんしゃん」

この話は、地域や時代によって、『さるかに合戦』、『さるとかに』、『かにむかし』などの別名で、内容も少しずつ異なって伝えられている。『かにむかし』は「新潟県に伝わる昔話を劇作家の木下順二が再話した」(岩崎書店)とされ、「まんが日本昔ばなし」(講談社:デラックス版)等の解説でも、新潟地方の昔ばなしとされている。
松谷みよ子の『さるかに』は、長谷川義史によるダイナミックな絵も魅力だ。やさしさを感じさせる母蟹、たくさんの小さなかわいい子蟹たち、意地悪な猿にはどこかとぼけた雰囲気。画面いっぱいに広がる青い空は、新潟の海につながっているようにみえてくる。

インフォメーション

『さるかに』(童心社)
初版:2008年
(上記引用文は2021年版より)