広い海。波間で揺れ、太陽でおいしくなるひじきの力
[長崎県 五島市]
2021.11.17 UP
赤い色をした仲間のなかに一匹だけ、真っ黒な小さな魚のスイミーは、1963年にアメリカで出版された絵本の主人公。『スイミー』は、世界中で翻訳され、国も世代も越えて今もなお多くの人に愛され続けている一冊だ。自分だけ色が違うことにも価値を見いだし、懸命に生きていくスイミーは、現代の漁業で課題の一つとなっている未利用魚の姿にどこか重なるのではないか。
ものがたり
オランダ生まれのレオ・レオニによる『スイミー』は、世界中で翻訳されている人気の絵本だ。日本では、1969年に発行され、1977年には小学2年生の国語の教科書に採用されている。知恵と勇気で周りに立ち向かっていくスイミー。そのかしこさや仲間をまとめるかっこよさは、子どもも大人も引きつける魅力がある。
広い海のどこかで、きょうだいたちと楽しく暮らしていた小さな魚のスイミー。ある日、恐ろしいマグロにきょうだいたちを飲み込まれてしまう。たった一匹、逃げることができたスイミーは、怖さや寂しさ、悲しさをこらえながら、暗く広い海を泳ぎ続けるなかで、素晴らしい物、おもしろい物と出会い、だんだん元気を取り戻す。やがて自分とそっくりの小さな魚のきょうだいたちをみつけるのだが、彼らは大きな魚を恐れ、じっと岩陰に隠れているだけだった。
そして、考えて、考えて、みんなで大きな魚のふりをして泳ぐと、大きな魚を追い払うことができたのだった。
きょうだいたちは皆、赤いのに、スイミーだけカラスガイよりも真っ黒。でも泳ぐのは誰より速かった。寂しい思いを経験したあとに巡り会った仲間たちと、海の中で生き抜いていくために、考え、リーダーシップを発揮するスイミー。実際の海の中でも、日々環境が変化する中でじっとしているわけにはいかないと、進化を続けている生物もたくさんいることだろう。
海からのものを目にしたら、その周りの環境を考えたい。スイミーが「考えて、考えて」乗り越えたことを思い出しながら。
ものがたり情報
『スイミー』ちいさな かしこい さかなの はなし(好学社)
レオ=レオニ文・絵、谷川俊太郎訳
出版年:1969年
写真:高村瑞穂