お伽話に身を委ねてほどける時間
[香川県 三豊市]
2023.01.31 UP
子どもから大人まで誰しもが一度は読んだことのある、海を舞台にした日本のお伽話といえば『浦島太郎』だ。伝説が伝わる土地は全国にいくつかある。今回はそのひとつ香川県の三豊市へ向かい、現代を生きる私たちにとっての“竜宮城”の意味を探した。
レシピ
瀬戸内海の魚は、漁獲量よりも種類の多さが自慢。網にかかった様々な小魚をおいしく長く楽しむには、南蛮漬けにするのが一番だ。カリッと揚げて野菜と一緒に南蛮地に浸せば、どんな魚も食べやすくなるが、今回は、瀬戸内では1年中水揚げされ、祝いの料理によく使われる真鯛の切り身で。
まずは塩をして下味をつけながら臭みを抜き、水気を拭いて粉を薄くまぶす。米粉と片栗粉を半々で混ぜて使うとベタッとせず、薄くもなりすぎず、程よく存在感のあるカリッとした衣になる。
油で揚げるのは、一緒に漬ける野菜を薄切りにして容器に入れ、南蛮地も作り、全てスタンバイしてから。くれぐれも揚げすぎないように注意して、周りがカリッとしたらすぐに油をきって漬け込みたい。まだ鯛の身がフワッとした漬けたてと、冷蔵庫で冷やしてしっかり味がしみたもの、どちらのおいしさも比べ難い。
材料(3~4人分)
鯛(切り身)2切れ(120g)/塩 少々/米粉(または小麦粉)大さじ1/片栗粉 大さじ1/玉ねぎ 1/4個/セロリ 1/2本/赤ピーマン 大1個/柚子(輪切り)小3~4枚/揚げ油 適量
■南蛮地
酒 50㎖/みりん 50㎖/出汁 100㎖/淡口醤油 50㎖/きび糖(または砂糖)小さじ 1/米酢 75㎖/赤唐辛子 1/2本
手順
1)鯛は骨があれば除き、身側に塩をふって10分ほどおく。
2)玉ねぎは縦に薄切りにしてざるに広げ、空気に触れさせて辛味を飛ばす。セロリ、赤ピーマンは長さを揃えてせん切りにし、保存容器に敷き詰め、玉ねぎの水気を絞って広げ入れる。
3)1)の水気をよく拭き、食べやすい大きさのそぎ切りにする。米粉と片栗粉を合わせたものをまぶして余分な粉をはたき、しばらくおいて衣をなじませる。
4)南蛮地を作る。小鍋に酒とみりんを入れて中火で沸騰させ、アルコールを飛ばす。出汁、淡口醤油、きび糖を加えて混ぜ、ひと煮立ちさせる。きび糖が溶けたら火を止めて粗熱を取り、米酢と種を抜いた赤唐辛子を加える。
5)揚げ油を170℃に熱して2)の鯛を入れ、周りがカリッとするまで1分ほど揚げて油をきる。熱いうちに1)にのせて柚子をのせ、南蛮地を回しかける。温かいうちに食べても、冷蔵庫で冷やしても。
料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。
文:奈良結子
写真:高村瑞穂