伝承キリコとカレイに託す祈り
[宮城県 南三陸]
2023.03.11 UP
海とともに生活を営んできた人々に自然災害がおそった2011年。 時を経て「南三陸311メモリアル」が、アートを切り口に「防災」「震災伝承」についての学びの場として2022年に開館した。 新たに生まれた伝承施設と、神様の依り代としてこの地に連綿と伝わってきた切り紙の“キリコ”を通じて、南三陸の海にまつわる今と未来を心に刻む。
レシピ
カレイは12月から2月の真冬の時期に産卵するため、三陸地方では正月前後に子持ちのカレイがよく水揚げされる。中でも体が大きく黄金色の卵を持つナメタガレイは、子孫繁栄や商売繁盛の縁起物として、この地方の年越しのご馳走に欠かせない「年取り魚」だ。
また、「ものがたり」で紹介したように東北地方では大漁を祈願する魚をモチーフにした“キリコ”が伝承されている。
今回は、お祝い膳の煮付けとは趣向を変えて、人気の韓国料理「ジョン」に仕立てた。骨と皮を除いてそぎ切りにし、卵と粉の薄衣をまとわせて油で焼けば、煮魚が苦手な子ども達も喜んで手をのばす。切り身を衣にくぐらせては余分を落とし、やさしく弱火で焼くことを繰り返してなるべく焼き色をつけないように火を通すのが、ふっくらと仕上げるコツだ。
縁起のよい「子宝」の卵は使わないので取り出すが、酒煎りにしてパラリとご飯にのせて食べれば無駄がない。包丁に自信のある人はぜひヒレの付け根にある縁側も切り出して皮を引き、身とは違った歯ごたえとこってりとした味を堪能してほしい。
材料(2人分)
カレイ(切り身)2切れ(320~330g、正味約150g)/酒 小さじ2/塩糀 小さじ1/万能ねぎ 1本/強力粉(または米粉)大さじ3/卵(L)1個/牛乳 小さじ1/太白胡麻油 小さじ1/2+大さじ1/2
■コチュジャンだれ
コチュジャン大さじ1/米酢小さじ1/きび糖(または砂糖)小さじ1/2/醤油小さじ1/2/ごま油小さじ1/2
手順
1)カレイは中骨に沿って包丁を入れ、両側の身を切り出して骨と卵を除く。皮を引き、厚みを揃えて一口大のそぎ切りにする(縁側も皮を除いてひと塊にすれば、切り身と同様に焼ける)。全体に酒をふってなじませ、塩糀をまぶして10分以上おく。万能ねぎは白い部分を除き、小口切りにする。
2)卵液を作る。ボウルに卵を割り入れてよくほぐし、ざるなどでこす。牛乳、太白胡麻油を加えて混ぜる。
3)1)のカレイに強力粉をまぶし、余分な粉をはたく。同様にしてもう一度強力粉をつけ、1)の卵液に加える。
4)フライパンを中火で熱し、太白胡麻油大さじ1/2をなじませる。弱火にし、3)のカレイの余分な卵液をきって並べ入れる。表面が乾かないうちに万能ねぎを均等に散らし、上下を返す。
5)4)をもう一度卵液にくぐらせ、余分をきって並べ入れる。油が足りなければ適宜加え、焼き色をつけないように弱火で両面を焼く。卵液がなくなるまでこれを繰り返し、器に盛る。コチュジャンだれの材料を混ぜ合わせて添える。
料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。
文:奈良結子
写真:高村瑞穂