海のレシピ project

Hayama

にぎわいの港町に並ぶ、素潜り漁のサザエ

[神奈川県 葉山町]

2022.08.22 UP

家族で訪れた海、友人と遊びに行った海、ひとりでのんびり佇んだ海など、思い入れのある海を持つ人もいるだろう。国内外で旅や滞在を続けながら、⽣命の根源的な輝きをテーマに作品を制作しているアーティスト後藤朋美さんにとっての大切な海は、葉山。「トピックス」ではその葉山の自慢の食が並ぶ朝市を訪れ、サザエなどの魚介類や新鮮な地元の野菜などを買いに出かけた。「レシピ」ではサザエを使ったオイル煮を紹介する。

レシピ

サザエのオイル煮と肝のペースト

[サザエ]

サザエは比較的温かい海域を好む巻貝。葉山町のある三浦半島では、6月から9月までは素潜り漁で獲れたサザエが市場に並ぶ。

サザエといえば、浜辺の店先で楽しめる「壺焼き」が有名だが、家庭で調理するならオイル煮もいい。殻ごとゆでるのは「火を通す」ためではなく、身を外しやすくするためなので、煮立てずやさしい火加減で。オイルで煮るときも加熱しすぎて固くなってしまわないよう、余熱を利用し、一度取り出してから最後に戻す方法がおすすめだ。

肝は、ここでは小鍋で酒蒸しにして火を通したが、できれば蒸し器で蒸してから裏ごしするとなめらかなソースになる。サザエや野菜につけてもよし、パンに塗ってもよし。濃厚なほろ苦さも絶妙なアクセントになって、鶏や鴨のレバーペーストにも匹敵するおいしさ。殻付きを捌いた苦労も、吹き飛んでしまうこと請け合いだ。



[作り方]

材料(3~4人分)
サザエ(殻付き)4~5個(1.5kg)/マッシュルーム 1パック/長ねぎ(白い部分)1本/にんにく 1かけ/ローリエ 1枚/乾燥ハーブ(タイム、オレガノなど)小さじ1/オリーブオイル 約1/2カップ/塩・酒・パセリ(みじん切り)・パン(薄切り)各適量

手順
1)サザエは殻をたわしできれいに洗う。かぶるくらいの水とともに鍋に入れて弱火にかけ、鍋肌にフツフツと泡が出てきてから1分ほど火を通す。氷水にとり、完全に冷ます。

2)マッシュルームは縦半分に切る。長ねぎは2㎝長さに切る。にんにくは縦半分に切って芯を除き、たたきつぶしてからみじん切りにする。パセリは茎を切り落とし、葉をみじん切りにする。

3)1)のサザエの殻と身の間にフォークを差し込んで身にグッと突き刺し、殻を回転させながら身を取り出す。

4)ひだの部分(はかま)から下の柔らかい肝を切り落とし、弾力のある身を縦半分に切って、オレンジ色の口を取り除く。コリコリとした白い部分(貝柱)は食べられるので、切り取っておく。身は塩水でもみ洗いして水けをしっかりと拭き、切り目を入れながら2㎝角に切る。

5)鍋に4)のサザエ、にんにく、かぶるくらいのオリーブオイルを入れ、サッとあぶったローリエ、パセリの茎を加えて弱火にかける。ふつふつとし始めたら火を止め、蓋をして1分ほど余熱で火を通し、サザエを取り出す。残った油にマッシュルームと長ねぎを加えて弱めの中火にかけ、ねぎが柔らかくなるまで煮る。

6)肝のペーストを作る。4)で切り落とした肝をよく見て、渦の模様がついているところから上(砂袋)を切り離して除く。クルリと巻いた部分を小鍋に入れて酒小さじ2、水大さじ1~2をふり、ふたをして弱火で3分ほど蒸し煮にする。中心までプリッとしたら、汁とともに裏ごしする。5)の油を大さじ1ほど加え、なめらかになるまで混ぜて器に入れる。

7)5)の鍋にサザエを戻し入れて煮立たせないように温め、パセリを散らす。器に盛り、塩少々をふりかける。トーストしたパンと肝のペーストを添える。

料理を担当したひと:
大黒谷寿恵(寿家主宰)
石川県金沢市出身。大学卒業後、料理の世界へ。2006年kurkku cafeのディレクター兼料理長に就任。独立後は講師、ケータリング、出張シェフ、レシピ開発を精力的に行う。2009年より鎌倉で料理教室「寿家」を開業。野菜や日本の伝統食材を用いた料理を得意とする。2015年に「にほんのごはん」のサイトを立ち上げる。共著に『和サラダ/和マリネ』(エイ出版)がある。

文:奈良結子
写真:高村瑞穂